石川 裕敏 個展  油彩作品展ー水滴の採取ー
ISHIKAWA Hirotoshi 「Pick up drops」


2010.6.14-6.19
ギャラリー白



■ 作品について(2008)■

この10年近くの間に、「The sign of waters(水の様子)」と題した水平方向のストロークの構図による油彩作品と「Pick up drops(水滴の採取)」と題したクレヨンによるドローイング(1日1作品限定制作)、及び点描を主とする油彩作品を同時平行的に制作してきました。
タイトルに「水」を連想する言葉を選んでいるのは、握るとこぼれてしまう捉えがたい「色」を形容する言葉として使用してきました。

見た目に印象の違う2テーマの作品群ですが、どちらも制作過程としては描くモチーフを設定するというよりも、キャンバスもしくは紙(私はフィールドと捉えます)に対して、絵具という色彩を伴った物質との戯れに身を委ねているといったほうが近いかもしれません。

描かれる前のフィールドの「白」の美しさにのまれてしまう前に、主に三原色から作る「黒」で地塗りの様な作業で描き始め、その地塗りの様な作業を幾度となく繰り返す間、前に塗られた色に呼応するように明度、彩度が変化していき、時に色相の変化を招きながら画面は物質的な質量が伴われていきます。そうして出来た、ほぼ無地の画面は微妙な表情を表し、その表情を手がかりにさらに構図や色やライン等が徐々に決められていきます。

比較的シンプルな単純な作業で進められた画面は、最終的には筆の止め処というものが増々難しくなっていきますが、色の濃淡や筆触、構図や質量といった、絵画を構成する要素が画面内で関数的にバランスが整っていき(これはいささか疑問が残り、バランスが整っていると自分が勝手にそう思っているだけかもしれませんが…)、その画面を長い間眺められる、言い換えればそうして出来た画面を愛おしく感じてきたあたりで、その絵の終着点が決定されていくようです。

引かれたラインや色1つで何か現実にあるものをイメージしてしまう感覚は、元々人間に備わった能力の1つであるのかもしれません。そう考えると日常生活において特に意識してなくても意外に目に映ってしまっている時間や光景、肌といった感覚と、色彩を伴った物質の戯れとの間で立ち表れた画面が、時間と記憶の淵をかすめるようなイメージで画面をとおしてクロスオーバーする処に、ひょっとしたら絵画の魅力が潜んでいるのではないかと感じてやみません。

筆を止めた、もしくは向かい合った画面は、行為と時間と記憶の蓄積されたひとまずの記録物。日々の生活としての、例えるなら「天気概況(The general weather conditionns)」とでもいえるでしょうか。そのような感覚としての記録行為が、その先いったい何処へ向かって行くのかは、制作という実証でもって結論を急がずにゆっくりと見ていきたいと思っています。

2008.2.20
石川裕敏



□ 略歴

1968

大阪に生まれる

1991

大阪芸術大学芸術学部美術学科卒業

 

個展

1991

ギャラリー白

(大阪)

1992

ギャラリー白

(大阪)

1993

ギャラリーココ

(京都)

1994

ギャラリー白

(大阪)

1995

ギャラリー白

(大阪)

1996

ギャラリー白

(大阪)

1997

ギャラリー白

(大阪)

2001

「WATERSIDE」

(ギャラリーエスプリヌーボー:岡山)

「The sign of waters」

(ギャラリー白:大阪)

「The general weather conditions」

(日下画廊:大阪)

2002

TENBA-A

(大阪)

2002

「The sign of waters」

(ギャラリーエスプリヌーボー:岡山)

2004

「The sign of waters」

(ギャラリーエスプリヌーボー:岡山)

2005

「The sign of waters」

(天野画廊:大阪)

2006

「The sign of waters」

(ギャラリーエスプリヌーボー:岡山)

2008

「General weather conditions」

 

(ギャラリー&スペース DELLA-PACE:兵庫)

2010

「Pick up drops」

(ギャラリー白:大阪)


グループ展

1991

Orphan Drug

(ギャラリーココ:京都)

 

NEW FACE

(ギャラリーVIEW:大阪)

 

BEYOND

(ギャラリー白:大阪)

 

翠雨の旋律

(ギャラリー白:大阪)

1993

LINE−循環としてのマトリックス−

 

(クリスタルギャラリー:大阪)

1994

イメージの鍛練

(ギャラリー白:大阪)

アート・ナウ'94

(兵庫県立近代美術館:兵庫)

1996

ペインタリネスU

(ギャラリー白:大阪)

 

アーティストファイル

(愛知芸術文化センター:愛知)

1997

1ダースの水槽

(ガレリアフェナルテ:愛知)

現代美術10人展

 

(京阪ギャラリー・オブ・アーツ・アンド・サイエンス:大阪)

1998

アーティストファイル

(愛知芸術文化センター:愛知)

1999

Radiant Ocuurrence−放射する出来事−

 

(名古屋芸術大学ギャラリーBE:愛知)

 

Compact Disc−CDというメディアの響宴−

 

(神戸アートビレッジセンター:兵庫)

2000

水辺−Insight of side−

(日下画廊:大阪)

2001

ペインタリネスX

(ギャラリー白:大阪)

2002

VOCA展2002

(上野の森美術館:東京)

2003

Fine Edge

(ギャラリーエスプリヌーボー:岡山)

呼吸−breath−

(ギャラリー白:大阪)

京都・洋画の現在〜85人の視点

(京都文化博物館:京都)

絵画を見る2

(ギャラリー白:大阪)


2004

DELICACY

(ギャラリーエスプリヌーボー:岡山)

2005

21 C ICAA 第12回ソウル・インターナショナル アート・フェスティバル2005

 

(朝鮮日報社ギャラリー:韓国)

2005

International Environment Art Expo Korea 2005

 

(SAM SUNG COEX CONVENTION HALL:韓国)

2006

ペインタリネス2006

(ギャラリー白:大阪)

2007

ペインタリネス2007

(ギャラリー白:大阪)

JAMIN

(ギャラリーエスプリヌーボー:岡山)

架空通信 百花繚乱展

(兵庫県立美術館ギャラリー棟:兵庫)

2008

絵画的絵画

(ギャラリー白:大阪)

JAMIN 2

(ギャラリーエスプリヌーボー:岡山)

2009

ペインタリネス2009

(ギャラリー白:大阪)

 

2009韓・日現代美術ー表現と方法展

 

(ドンペグ・アートセンター:韓国釜山)

パブリックコレクション

 

関西国際大学(兵庫県三木市)

 

旧松下電気株式会社人材開発センター(大阪府枚方市)

 

タピエ(大阪/東京)

 

ワイズコーポレーション(愛知県岡崎市)